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歯周病とは?(原因、症状、治し方、治療法など)
こんにちは!、三重県津市 医療法人大杉歯科医院 院長の大杉和輝です!!
最近、歯周病に関する相談やセカンドオピニオンで来院される方が増えております。
歯周病とは恐ろしい病気で、痛みが無く気がついたら進行し、来院された時には「残せる歯が数本しかない」ような患者様もいらっしゃいます。
患者様が主に症状として気がつかれるのは「歯がぐらぐらする」「歯が浮いた感じがする」「歯が抜けた」などですが、これは根の尖端付近まで骨が溶けてしまい、歯を支える組織が不足してきていることを意味します。
歯周病を症状として気がついたときにはすでに手遅れであることが多いのです。
また、一度進行した歯周病を完全に治癒させることは今の医療では難しく、歯周病が進行する前に予防することがとても大切なのです。
それでは歯周病について詳しくみていきましょう。
ちなみにですが、以前書かせていただいた「歯根端切除術(根管治療で治らない根尖病変の治療法)」の方も多数の方に読んでいただいてる人気の記事となっております。まだ読まれてない方おりましたらぜひご参照ください。
また、インプラントに関してもこちら「インプラントとは?(寿命?、メリットデメリット?、MRI?、費用?など)」で詳しく書いてありますので、是非お読みください。
1.歯周病とは?
2.歯周病菌は殺菌できる?
3.歯周病の原因は?
4.歯周病の症状は?(歯周病チェックリスト)
5.歯周病は治る? 治療法は? 自宅で治せる?
6.うがい薬(洗口剤)は効果あるの?
7.歯磨き粉(歯磨剤)は効果あるの?
8.歯周病は予防できる?
9.歯周病は口臭の原因になる?
10.歯周病と全身の関係
11.当院の歯周病治療の流れ
12.歯周病治療は痛い?
13.歯周病に効く薬は? ジスロマック?
14.歯周病が進行すると歯並びが悪くなる?
15.歯周病が進行しており歯並びが悪いが、矯正治療は可能か?
16.歯周病治療に矯正治療を併用するメリット
17.歯周病の手遅れな症状とは?
18.歯周病により溶けた骨を治す‥歯周組織再生療法
19.終わりに
歯周病は細菌によって引き起こされる感染症のことで、それが原因で歯の周囲の骨が溶けて無くなってしまいます。最終的には歯を支える骨(歯槽骨)が根の先端部まで溶けてしまい、歯がグラグラしてきて抜けてしまいます。
また、歯周病ですが、「歯を失う原因の第一位」として挙げあれます。
(ちなみに第二位は、虫歯です)
歯周病は2001年にギネスに登録されておりまして、ギネスブックにはこのように記載されております。
・全世界で最も蔓延している病気は歯周病である
・歯周病は人類史上、最も感染者数の多い感染症である
・地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数える程しかいない
それから約20年ほどたってますが、一位を破られることなく、今に至ってます。
非常に恐ろしい病気であることがわかります。
歯周病の特徴
・QOL(生活の質)に大きく影響する
・進行すると完全治癒がない
・生活習慣など環境因子に大きく影響を受ける(特に喫煙・歯周病が関与)
・咬合因子が関与する
・Silent disease‥自覚症状なく進行する(歯がグラグラ揺れてくることで気がつく)
歯周病菌をお口の中で殺菌することは”不可能に近い”です。
お口の中には、約700種類の細菌(悪玉菌、善玉菌、日和見菌)が住んでいます。
これらは普段あまり悪いことをしませんが、ブラッシングが不十分だったり・砂糖を摂取すると細菌がねばねばした物質を作り、歯の表面にひっつきます。
これを歯垢(バイオフィルム)と呼び、粘着性が強く、軽くうがいをした程度では落ちません。
バイオフィルムは、台所や風呂場の排水口などにも発生するのですが、タワシなどで強く(物理的に)こすらないと除去することが出来ません。これと同じで、お口の中の歯垢(バイオフィルム)も歯ブラシで(物理的に)磨くことでしか落とすことが出来ないのです。
また、台所や風呂場の排水口などであれば、”殺菌性の強い”薬剤を用いることでバイオフィルムごと破壊できるかもしれませんが、お口の中で使用できる薬剤(洗口剤や歯磨剤)には”限界がある”のでそれらの効果は”あまり期待できない”と言えるでしょう。
つまり、洗口剤・歯磨剤に含まれている”殺菌効果”には限界があり、歯ブラシで頑張って磨く必要があるということです。
また、このバイオフィルムを放置すると、バイオフィルム内に含まれる細菌が歯肉に炎症を引き起こし、炎症の結果として歯を支える骨(歯槽骨)が溶け、最終的には歯を支える骨が無くなってしまうので、早期の治療介入が必要であるといえるでしょう。
歯周病の原因は”細菌”です。
上記しましたが、細菌を放置するとバイオフィルムを形成し、歯肉に炎症を引き起こし、歯周病を進行させます。
歯周病の進行ステップ
・歯の周りにプラーク(磨き残し)が溜まる
・プラーク(磨き残し)の中で細菌が繁殖する
・細菌が原因で、歯肉に炎症(発赤・出血・腫脹など)が起きる(歯肉炎と呼ばれる状態)
・歯周病菌が血液(ヘミン鉄)を餌に、爆発的に増加し、バイオフィルムを形成する
・歯の周囲の炎症が悪化し、その結果、歯を支える骨(歯槽骨)が溶ける
・縁下歯石が付着し、炎症がどんどん拡大、根の先端部まで骨吸収が進行する
・歯がグラグラしてきて抜けてしまう
歯周病の症状は下記のようなものがあります。
当てはまるものが多ければ早めに歯科医院を受診されることをお勧めします。
歯周病チェックリスト
・口臭を指摘されたことがある、口臭が気になる
・朝起きたときに口の中がねばねばする
・歯磨きした際に血がでる、歯ブラシが赤くなる
・歯茎が赤く腫れている
・歯茎が下がり、歯が長くなった気がする
・歯茎を押すと血が出たり、膿が出る
・昔と比べて歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなってきた
・歯が浮いた感じがする
・昔と比べて歯並びが変わった気がする
・歯がぐらぐらする
歯周病を治すのは”難しい”です。
しかし、”症状がでないように・悪化しないようにコントロールすることは可能”です。
また、歯周病を患者様ご自身の力(自宅で)で治すのは”不可能”です。
”歯周病菌が治癒を阻害”するので、歯科医院における”専門的な治療”が必要になります。
〜歯周病の治療法〜
歯周病が進行してしまった場合の治療としては、歯周病をしっかりとコントロールし、メンテナンスにより歯が長持ちする状態を作り出すことにあると言えるでしょう。
歯が長持ちする状態を作り出すのに最も重要なことは、歯磨き(ブラッシング)であり、患者様が自ら”中心選手”となり歯周病の治療・予防を率先して行っていく必要があります。
当然、歯磨きを患者様に丸投げするわけでは無く、プロ(歯科衛生士)の目からみた適切で・効率的で・長続きする患者様に合ったブラッシング法を一緒に見つけ、練習し、実践していくサポートをさせていただく必要があります。
”長続き”というのが非常に重要で、歯ブラシ・歯間ブラシ・フロス・タフトブラシなど多数のものを使ってしまうと1回1回の歯磨きが複雑になってしまい、とても生涯続けていけるものではなくなるので、必要かつ十分でよりシンプルな歯磨きを身につける必要があります。
またそれと平行して、歯科医院で歯周ポケット内の歯石(縁下歯石)を1本ずつ丁寧に除去し、歯周組織の炎症をコントロールする必要があります。
適切なブラッシング+縁下歯石の除去 により大部分の歯周病を”コントロール”することが可能となります。
また、骨欠損の著しい部分に関しては、上記のことのみではコントロールをするのが難しいのですが、”歯周組織再生療法”を行うことでコントロールすることが可能です。
個人的な見解としては、歯周病予防に対し、”効果はあるが、あくまで補助的なものであり、主役は歯磨きである”ということです。
ただ、上手く使用することで効果は期待できると考えています。
”歯磨きを疎かにして、洗口剤を使ったところで効果はあまり期待できない”ですし、”洗口剤を用いる意味も全く無いというわけではない”ということです。
洗口剤に関しては多数の論文が出ており、「プラークの付着を抑制でき、歯肉の炎症もコントロールできる」との結果が出ており、推奨される使い方としては「歯磨きに追加して、20mlの洗口剤で、1日2回30秒ずつうがいをする」とされています。
適切な歯磨きを行った後に、洗口剤を用いることで、プラークの付着を抑制でき、歯肉の炎症もコントールできるというわけです。
したがって、当院にて主に洗口剤の使用を推奨させていただく場合ですが、主に2つあります。
・歯周病が重度に進行されている方‥通常の歯ブラシに加え、補助的に用いる
・インプラント、歯周病治療などでオペをされた方‥術後は通常の歯ブラシが難しいため、補助的に用いる
うがい薬(洗口剤)と同じですが、歯周病予防に対し、”効果はあるが、あくまで補助的なものであり、主役は歯磨きである”ということです。
プラークの除去効率ですが、”歯磨剤を使用しても、プラークの除去効率が変わらない”との報告もあるので、歯磨剤を用いることで歯磨きの効率が良くなることもなさそうです。
むしろ歯磨剤の泡により歯や歯茎が見えにくくなるので、適切に歯ブラシを当てにくくなり、むしろマイナスになることさえあります。
当院での歯ブラシ指導の初期には、一時的に歯磨き粉(歯磨剤)の使用を中止していただくこともあるくらいです。
*もちろん歯ブラシが適切に行えるようになった段階で、歯磨き粉の使用を再開してもらいます。
各メーカーからいろいろな種類の歯磨き粉が出ており、各種成分の有効性などが書かれておりますが、あくまで”歯ブラシの補助的なもの”として考えておくのが良さそうです。
各メーカーからいろいろな歯磨き粉が出ており、歯周病予防に効果がある有効成分が記載されております。
その中でも、最近注目されているウコン成分由来のクルクミンは”歯周病菌の中でも最凶のP.G菌の増加を止める”ことが研究でわかっており、それが配合された歯磨剤(HaBon PG STOP)も発売されておりますので、歯周病予防に対して補助的に用いる効果はあると考えております。
別件ですが、歯磨き粉(歯磨剤)には”虫歯予防”というとても重要な役割があります。
フッ素が虫歯予防に効果があることは多数の研究でわかっております。
⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩
・水道水のフッ素化は世界25カ国(日本は含まれていない)で実施されており、子供の乳歯と永久歯の両方の虫歯レベルを減少させるのに効果的であること
・永久歯列におけるフッ化物塗布は虫歯抑制において効果的であること
・フッ化物なしの歯磨剤と比較した場合、虫歯予防にフッ化物配合歯磨剤を使用することは効果的であること
虫歯予防において、歯磨き粉(歯磨剤)の中のフッ素をいかに上手く摂取するかが重要であるかがわかります。日本では水道水にフッ素が入ってないので、自分の意思で・自らフッ素を摂取しないといけないのです。
また、洗口剤にはフッ素が入っていないものが多く、入っていたとしてもフッ素濃度が低いものが多いです。
虫歯のリスクが高く・フッ素を摂取すべき人が、洗口剤を用いると、虫歯にとってはむしろマイナスになることもあるので注意が必要です。ただ用いれば良いというわけではありません。
自分に合った歯磨剤・洗口剤を選択することは非常に難しく、歯科医院にて自分に合ったもの選んでもらうことが安全と言えるでしょう。
まとめ
・歯周病患者‥歯磨きが最重要+虫歯リスクが低い場合は洗口剤を補助的に用いることも良い
・虫歯患者‥歯周病予防のため歯磨きは頑張る+虫歯予防のためフッ素を中心に考える
歯周病の予防は可能です。歯周病が進行する前から適切な歯ブラシの方法を見につけ実践するのが得策と言えるでしょう。
基本は、3ヶ月に1回のメンテナンスを推奨されています。
⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩
・定期的なメンテナンス間隔を維持している患者は、メンテナンスが少なかったり、全く受けていない患者に比べてアタッチメントロス(歯周病の進行)や歯の喪失が少ない
・3ヶ月に1回のメンテナンスを行った患者は、それ以上の間隔でメンテナンスを受けた患者と比較して、歯周病が進行するリスクを下げる
・患者の大多数において、約90日後には病原性を示す量にバイオフィルムが再形成される
当院のメンテナンスの間隔
基本‥3ヶ月
中等度または進行性の歯周炎またはインプラント周囲炎‥3か月
軽度の歯周炎またはインプラント粘膜炎‥4か月
歯周炎またはインプラント粘膜炎に対して感受性が低い‥6か月
歯周病は口臭の原因の大部分を占めます。
・真性口臭症・生理的口臭(22%)‥口腔清掃不良のために蓄積した舌苔やプラークに由来
・真性口臭症・歯周病等由来(45%)‥歯周病、重度う蝕、唾液腺の機能低下などに由来
・真性口臭症・全身疾患由来(1%)‥肝臓疾患などに由来
・仮性口臭症(29%)‥自分に口臭があると思いこむ精神的なもの
・口臭恐怖症(3%)‥真性口臭症、仮性口臭症に対する治療では訴えの改善が期待できないもの
主に口腔清掃不良のため蓄積した舌苔やプラークに由来するもの、歯周病等に由来するものが大部分を占めますので、歯周病を改善すれば改善する口臭も多いといえます。
歯周病が起こるということは、歯肉に炎症が存在することを意味します。
その際に炎症によって出る毒性物質が歯肉の血管から全身に入ると、様々な病気を引き起こす原因となります。
炎症性物質が関与するもの
・糖尿病‥血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせる
・早産
・低体重児出産
・肥満
・心筋梗塞‥歯周病患者は健常者と比べて、心筋梗塞を発症する確率が3倍高いとも言われている
・脳梗塞
・アルツハイマー病の悪化
歯周病の予防・治療を行うことで、全身の様々な病気のリスクを下げることが可能ですので、毎日の歯磨きがとても重要であるということがわかります。
歯周病治療でやることはとてもシンプルで ”細菌を除去し炎症をコントロールする”これに尽きます。
本来は、抜歯・根管治療など様々なことが絡んでくるのでもっと複雑になりますが、シンプルにまとめると以下のようになります。
1.ブラッシング法をマスターする‥日々のブラッシングはとても重要で、これなくして歯周病治療は成り立ちません。歯科医院でお口の中を綺麗にしたとしてもお食事をとればまたプラークが付着しますので、それらを毎日綺麗に除去しないといけません。ブラッシングの方法は人それぞれで、歯並び・歯茎の薄さ・器用さ・歯周病の進行度合いなどにもよってきますので、一概にベストな方法は無く、患者様個々に合った生涯続けれるシンプルで効果的にプラークを除去できる方法を練習していく必要があり、担当の歯科衛生士と共に練習し、身につけていただく必要があります。
2.歯科医院で歯肉縁下の歯石を丁寧に除去する‥歯肉の中に付着した歯石はとても強固で簡単に除去することはできません。また歯肉が歯石に覆いかぶさっているので直接見ることは出来ず、手指の繊細な感覚などに頼ることとなります。肉眼で歯石を見ることはなかなか難しいため、高倍率のルーペも必要となってきます。1本1本丁寧に除去していくと1本10分以上かかることもよくあります。
3.歯周病治療の評価‥それぞれの歯の歯周病の進行度を細かく検査します。ポケット深さ・出血の有無・動揺度の有無などをみるのですが、その歯が安定した状態までコントロール出来たかを評価します。このときの検査結果次第で、抜歯 or 保存が決まる歯もあります。また、骨欠損(歯周病による骨吸収)が大きく進行していて本来であれば抜歯のような歯も、条件が整っていれば歯周組織再生療法(歯周病により溶けた骨を治す治療)により骨欠損を改善し、歯を残せる可能性があるので、その適応かどうかもCTを撮影し判断していきます。
4.歯周組織再生療法‥溶けた骨を再生する治療のこと、骨を再生することでポケットを浅くし、炎症をコントロールする。
5.メンテナンス‥基本は3ヶ月に1回のペースで通うのがベストです。口腔内の状況・ブラッシングの状況などでペースが変わります。普段のブラッシングでは落としきれない部分のプラークを細かく除去したり、磨き残しがある部分がないか、歯周病が安定した状態でコントロール出来ているかなどをチェックします。
基本的にそこまで痛いことはありません。痛みを感じることがあるとすると歯石除去の時ですが痛みが出ておつらい際には、しっかりと麻酔させていただくので心配していたく必要はありません。
抗生剤(ジスロマックなど)は、休眠している細菌以外への効果を期待することができますが、効果期間が過ぎればまた元通りの状態に戻ってしまうので、一時的な効果は期待できても、歯周病を完治させることはできません。
さらに、抗生剤を乱用することで耐性菌を作ってしまうリスクもありますので、歯周病治療のためにむやみに使うべきではありません。
歯を支える組織が少なること(歯周病の進行)により起こること
・唇側へのフレア(歯が唇側へ傾斜し、出っ歯になる)
・歯の挺出(歯が骨から飛びだしてくる)
・歯の捻転(歯が回転する)
・歯と歯の間の隙間が空いてくる
歯根膜が外力に対して歯を安定させることができなくなった結果、このようなこと起こると考えられています。
歯周病が進行すると歯並びが悪くなるので、「歯周病の治療を行う際には、矯正治療を併用し、より良い噛み合わせを作ること」の重要性が示唆されております。
*この内容は、「歯周病と歯並びの関係」にて詳しく記載しております
以下のことが満たされれば、矯正治療を行っても良いと考えています。
歯周病患者に対し、矯正治療を行う際に守るべきルール
・軽い力で歯を動かすこと(強い力の作用は歯周病を悪化させる)
・歯周病の炎症がないこと
・治療中の口腔衛生状態が良好であること(圧下中に健全な歯肉組織を維持することが、辺縁骨破壊のリスクを低減する)
上記のことを満たすために必要な治療
1.十分な歯周基本治療(歯周病の初期の治療)を行う
2.骨欠損が残る場合は、歯周組織再生療法(歯周病によって溶けた骨を再生する治療)を行う
3.口腔内の炎症をコントロールしてから矯正治療を行うことが推奨されています。
*当院の矯正治療‥マウスピース矯正(インビザライン)はこちらで詳しく解説しております。
*当院の矯正治療‥インプラントと矯正治療の関係についてはこちらで詳しく解説しております。
主に以下のことがあります!
・出っ歯の改善=審美性が良くなる、口元が引っ込む
・噛み合わせの改善=機能的に長持ちする 審美的にも、機能的にもメリットがあると言えるでしょう。
ただ、歯周病が完璧にコントロールされないと、矯正治療を行うことは出来ないので注意が必要です。
まず歯周病で歯を失う流れについて復習していきましょう。
歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が少なくなり、歯がぐらぐらしてきます。また、その結果として歯が浮いたような感じ、歯の移動(歯並びの変化)、食べ物が詰まりやすくなる などの症状が起きてきます。
したがって、これらの症状がある場合には歯周病は重度に進行している可能性があります。
歯周病は放置すると進行する一方なので、早期に歯科医院に受診されることをお勧めします。
また、上記の「4.歯周病の症状は?(歯周病チェックリスト)」でも書かせていただきましたが、歯周病のチェック項目は以下になります。
⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩
歯周病チェックリスト
・口臭を指摘されたことがある、口臭が気になる
・朝起きたときに口の中がねばねばする
・歯磨きした際に血がでる、歯ブラシが赤くなる
・歯茎が赤く腫れている
・歯茎が下がり、歯が長くなった気がする
・歯茎を押すと血が出たり、膿が出る
・昔と比べて歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなってきた
・歯が浮いた感じがする
・昔と比べて歯並びが変わった気がする
・歯がぐらぐらする
下の4つの項目に当てはまる場合は、歯周病が重度に進行し、根の先端部まで骨が溶けている可能性があり、抜歯が必要な場合も多々ありまので、症状が当てはまると思われた方いましたら是非お早めにご相談ください。
歯の状態によっては、歯周組織再生療法を行うことで残せるチャンスがありますので、是非お早めにご相談ください。
*歯周組織再生療法に関しては、下記の「18.歯周病により溶けた骨を治す‥歯周組織再生療法」に詳しく書いてあるので、是非お読みください。
歯周組織再生療法の最大の目的は『歯を残すこと』です。
歯周病により失われた骨を再生することで歯の寿命を長くします。深いポケットのある歯に対し、長期でみたときの生存率を高めるため(長持ちさせるため)に行います。
深いポケット(骨欠損)の残存は、メンテナンスに通っている患者様の歯の喪失リスクを高めることにも繋がりますので、歯周組織再生療法によりポケットを浅くし、歯周病がコントロール出来た状態でメンテナンスを行うほうが安心といえるでしょう。
当院の歯周病のページでも詳しく記載してありますが、ここでも詳しく解説させていただきます。
今現在、日本でよく行われているものには、主に以下の4つの方法があります。
①骨移植
②組織再生誘導法(GTR:Guided Tissue Regeneration)‥物理的に上皮細胞の移動を阻止することで歯根膜細胞を誘導し新付着を得る術式のこと、1982年に最初に報告され、それ以降、700以上の臨床論文と300以上の基礎論文が世界中から報告されている。
③エムドゲイン療法(EMD:Enamel Matrix Derivative)‥EMDは歯根膜/骨芽細胞の遊走と増殖により無細胞セメント質を形成し、比較的治癒が早いことが特徴である。1990年代に開発され、現在では40カ国以上で使用、600以上の臨床論文と1000以上の基礎論文が世界中から報告されている。
④塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF:basic Fibroblast Growth Factor)
当院にて良く用いている方法は、②組織再生誘導法・③エムドゲイン療法になるのですが、骨欠損の状態・術式などによりこれらを併用して行うことが多いです。
歯周組織再生療法を成功に導くための因子
⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩
①骨が再生しやすい環境を作る
②その環境で血餅を安定させる
③血餅が安定した状態を保護し、維持する
これら3つを達成するためは、創部の安定に配慮した術式選択・適切な術後管理が必要となってきます。
術式ですが、現在ではMIST(Minimally Invasive Surgical Technique)やM-MIST(Modified MIST)などのマイクロスコープを用いた低侵襲な術式が推奨されており、当院でもこれらの術式で行うことが多いです。
細かい話ですが、前歯部で歯間乳頭(歯と歯の間の歯茎)の審美性にも配慮すべき場合は、NIPSA(Nonincised Papilla Surgical Approach)やEntire Papilla preservation techniqueという歯間乳頭(歯と歯の間の歯茎)に切開を入れないといった最新の術式も採用することもあります。
*歯周組織再生療法により下顎前歯を温存した症例
*歯周組織再生療法により右上大臼歯を温存した症例
長々と書いてきましたが、歯周病治療はとても専門性が高い治療と感じてます。歯周病に対し根本的な治療ができる医院作り、専門の歯科衛生士の育成、歯周組織再生療法を行える設備・技術力 など様々なものが必要となってきます。
歯周病チェックリストをみていただき、少しでも当てはまるなと思った方いましたら是非お気軽にご相談ください。初診にて来院していただければ、歯周病の検査など細かく行い、分析させていただきます。
最近、歯周病に関する相談やセカンドオピニオンで来院される方が増えております。
歯周病とは恐ろしい病気で、痛みが無く気がついたら進行し、来院された時には「残せる歯が数本しかない」ような患者様もいらっしゃいます。
患者様が主に症状として気がつかれるのは「歯がぐらぐらする」「歯が浮いた感じがする」「歯が抜けた」などですが、これは根の尖端付近まで骨が溶けてしまい、歯を支える組織が不足してきていることを意味します。
歯周病を症状として気がついたときにはすでに手遅れであることが多いのです。
また、一度進行した歯周病を完全に治癒させることは今の医療では難しく、歯周病が進行する前に予防することがとても大切なのです。
それでは歯周病について詳しくみていきましょう。
ちなみにですが、以前書かせていただいた「歯根端切除術(根管治療で治らない根尖病変の治療法)」の方も多数の方に読んでいただいてる人気の記事となっております。まだ読まれてない方おりましたらぜひご参照ください。
また、インプラントに関してもこちら「インプラントとは?(寿命?、メリットデメリット?、MRI?、費用?など)」で詳しく書いてありますので、是非お読みください。
目次
1.歯周病とは?
2.歯周病菌は殺菌できる?
3.歯周病の原因は?
4.歯周病の症状は?(歯周病チェックリスト)
5.歯周病は治る? 治療法は? 自宅で治せる?
6.うがい薬(洗口剤)は効果あるの?
7.歯磨き粉(歯磨剤)は効果あるの?
8.歯周病は予防できる?
9.歯周病は口臭の原因になる?
10.歯周病と全身の関係
11.当院の歯周病治療の流れ
12.歯周病治療は痛い?
13.歯周病に効く薬は? ジスロマック?
14.歯周病が進行すると歯並びが悪くなる?
15.歯周病が進行しており歯並びが悪いが、矯正治療は可能か?
16.歯周病治療に矯正治療を併用するメリット
17.歯周病の手遅れな症状とは?
18.歯周病により溶けた骨を治す‥歯周組織再生療法
19.終わりに
1.歯周病とは?
歯周病は細菌によって引き起こされる感染症のことで、それが原因で歯の周囲の骨が溶けて無くなってしまいます。最終的には歯を支える骨(歯槽骨)が根の先端部まで溶けてしまい、歯がグラグラしてきて抜けてしまいます。
また、歯周病ですが、「歯を失う原因の第一位」として挙げあれます。
(ちなみに第二位は、虫歯です)
歯周病は2001年にギネスに登録されておりまして、ギネスブックにはこのように記載されております。
・全世界で最も蔓延している病気は歯周病である
・歯周病は人類史上、最も感染者数の多い感染症である
・地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数える程しかいない
それから約20年ほどたってますが、一位を破られることなく、今に至ってます。
非常に恐ろしい病気であることがわかります。
歯周病の特徴
・QOL(生活の質)に大きく影響する
・進行すると完全治癒がない
・生活習慣など環境因子に大きく影響を受ける(特に喫煙・歯周病が関与)
・咬合因子が関与する
・Silent disease‥自覚症状なく進行する(歯がグラグラ揺れてくることで気がつく)
2.歯周病菌は殺菌できる?
歯周病菌をお口の中で殺菌することは”不可能に近い”です。
お口の中には、約700種類の細菌(悪玉菌、善玉菌、日和見菌)が住んでいます。
これらは普段あまり悪いことをしませんが、ブラッシングが不十分だったり・砂糖を摂取すると細菌がねばねばした物質を作り、歯の表面にひっつきます。
これを歯垢(バイオフィルム)と呼び、粘着性が強く、軽くうがいをした程度では落ちません。
バイオフィルムは、台所や風呂場の排水口などにも発生するのですが、タワシなどで強く(物理的に)こすらないと除去することが出来ません。これと同じで、お口の中の歯垢(バイオフィルム)も歯ブラシで(物理的に)磨くことでしか落とすことが出来ないのです。
また、台所や風呂場の排水口などであれば、”殺菌性の強い”薬剤を用いることでバイオフィルムごと破壊できるかもしれませんが、お口の中で使用できる薬剤(洗口剤や歯磨剤)には”限界がある”のでそれらの効果は”あまり期待できない”と言えるでしょう。
つまり、洗口剤・歯磨剤に含まれている”殺菌効果”には限界があり、歯ブラシで頑張って磨く必要があるということです。
また、このバイオフィルムを放置すると、バイオフィルム内に含まれる細菌が歯肉に炎症を引き起こし、炎症の結果として歯を支える骨(歯槽骨)が溶け、最終的には歯を支える骨が無くなってしまうので、早期の治療介入が必要であるといえるでしょう。
3.歯周病の原因は?
歯周病の原因は”細菌”です。
上記しましたが、細菌を放置するとバイオフィルムを形成し、歯肉に炎症を引き起こし、歯周病を進行させます。
歯周病の進行ステップ
・歯の周りにプラーク(磨き残し)が溜まる
・プラーク(磨き残し)の中で細菌が繁殖する
・細菌が原因で、歯肉に炎症(発赤・出血・腫脹など)が起きる(歯肉炎と呼ばれる状態)
・歯周病菌が血液(ヘミン鉄)を餌に、爆発的に増加し、バイオフィルムを形成する
・歯の周囲の炎症が悪化し、その結果、歯を支える骨(歯槽骨)が溶ける
・縁下歯石が付着し、炎症がどんどん拡大、根の先端部まで骨吸収が進行する
・歯がグラグラしてきて抜けてしまう
4.歯周病の症状は?(歯周病チェックリスト)
歯周病の症状は下記のようなものがあります。
当てはまるものが多ければ早めに歯科医院を受診されることをお勧めします。
歯周病チェックリスト
・口臭を指摘されたことがある、口臭が気になる
・朝起きたときに口の中がねばねばする
・歯磨きした際に血がでる、歯ブラシが赤くなる
・歯茎が赤く腫れている
・歯茎が下がり、歯が長くなった気がする
・歯茎を押すと血が出たり、膿が出る
・昔と比べて歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなってきた
・歯が浮いた感じがする
・昔と比べて歯並びが変わった気がする
・歯がぐらぐらする
5.歯周病は治る? 治療法は? 自宅で治せる?
歯周病を治すのは”難しい”です。
しかし、”症状がでないように・悪化しないようにコントロールすることは可能”です。
また、歯周病を患者様ご自身の力(自宅で)で治すのは”不可能”です。
”歯周病菌が治癒を阻害”するので、歯科医院における”専門的な治療”が必要になります。
〜歯周病の治療法〜
歯周病が進行してしまった場合の治療としては、歯周病をしっかりとコントロールし、メンテナンスにより歯が長持ちする状態を作り出すことにあると言えるでしょう。
歯が長持ちする状態を作り出すのに最も重要なことは、歯磨き(ブラッシング)であり、患者様が自ら”中心選手”となり歯周病の治療・予防を率先して行っていく必要があります。
当然、歯磨きを患者様に丸投げするわけでは無く、プロ(歯科衛生士)の目からみた適切で・効率的で・長続きする患者様に合ったブラッシング法を一緒に見つけ、練習し、実践していくサポートをさせていただく必要があります。
”長続き”というのが非常に重要で、歯ブラシ・歯間ブラシ・フロス・タフトブラシなど多数のものを使ってしまうと1回1回の歯磨きが複雑になってしまい、とても生涯続けていけるものではなくなるので、必要かつ十分でよりシンプルな歯磨きを身につける必要があります。
またそれと平行して、歯科医院で歯周ポケット内の歯石(縁下歯石)を1本ずつ丁寧に除去し、歯周組織の炎症をコントロールする必要があります。
適切なブラッシング+縁下歯石の除去 により大部分の歯周病を”コントロール”することが可能となります。
また、骨欠損の著しい部分に関しては、上記のことのみではコントロールをするのが難しいのですが、”歯周組織再生療法”を行うことでコントロールすることが可能です。
6.うがい薬(洗口剤)は効果あるの?
個人的な見解としては、歯周病予防に対し、”効果はあるが、あくまで補助的なものであり、主役は歯磨きである”ということです。
ただ、上手く使用することで効果は期待できると考えています。
”歯磨きを疎かにして、洗口剤を使ったところで効果はあまり期待できない”ですし、”洗口剤を用いる意味も全く無いというわけではない”ということです。
洗口剤に関しては多数の論文が出ており、「プラークの付着を抑制でき、歯肉の炎症もコントロールできる」との結果が出ており、推奨される使い方としては「歯磨きに追加して、20mlの洗口剤で、1日2回30秒ずつうがいをする」とされています。
適切な歯磨きを行った後に、洗口剤を用いることで、プラークの付着を抑制でき、歯肉の炎症もコントールできるというわけです。
したがって、当院にて主に洗口剤の使用を推奨させていただく場合ですが、主に2つあります。
・歯周病が重度に進行されている方‥通常の歯ブラシに加え、補助的に用いる
・インプラント、歯周病治療などでオペをされた方‥術後は通常の歯ブラシが難しいため、補助的に用いる
7.歯磨き粉(歯磨剤)は効果あるの?
うがい薬(洗口剤)と同じですが、歯周病予防に対し、”効果はあるが、あくまで補助的なものであり、主役は歯磨きである”ということです。
プラークの除去効率ですが、”歯磨剤を使用しても、プラークの除去効率が変わらない”との報告もあるので、歯磨剤を用いることで歯磨きの効率が良くなることもなさそうです。
むしろ歯磨剤の泡により歯や歯茎が見えにくくなるので、適切に歯ブラシを当てにくくなり、むしろマイナスになることさえあります。
当院での歯ブラシ指導の初期には、一時的に歯磨き粉(歯磨剤)の使用を中止していただくこともあるくらいです。
*もちろん歯ブラシが適切に行えるようになった段階で、歯磨き粉の使用を再開してもらいます。
各メーカーからいろいろな種類の歯磨き粉が出ており、各種成分の有効性などが書かれておりますが、あくまで”歯ブラシの補助的なもの”として考えておくのが良さそうです。
各メーカーからいろいろな歯磨き粉が出ており、歯周病予防に効果がある有効成分が記載されております。
その中でも、最近注目されているウコン成分由来のクルクミンは”歯周病菌の中でも最凶のP.G菌の増加を止める”ことが研究でわかっており、それが配合された歯磨剤(HaBon PG STOP)も発売されておりますので、歯周病予防に対して補助的に用いる効果はあると考えております。
別件ですが、歯磨き粉(歯磨剤)には”虫歯予防”というとても重要な役割があります。
フッ素が虫歯予防に効果があることは多数の研究でわかっております。
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・水道水のフッ素化は世界25カ国(日本は含まれていない)で実施されており、子供の乳歯と永久歯の両方の虫歯レベルを減少させるのに効果的であること
・永久歯列におけるフッ化物塗布は虫歯抑制において効果的であること
・フッ化物なしの歯磨剤と比較した場合、虫歯予防にフッ化物配合歯磨剤を使用することは効果的であること
虫歯予防において、歯磨き粉(歯磨剤)の中のフッ素をいかに上手く摂取するかが重要であるかがわかります。日本では水道水にフッ素が入ってないので、自分の意思で・自らフッ素を摂取しないといけないのです。
また、洗口剤にはフッ素が入っていないものが多く、入っていたとしてもフッ素濃度が低いものが多いです。
虫歯のリスクが高く・フッ素を摂取すべき人が、洗口剤を用いると、虫歯にとってはむしろマイナスになることもあるので注意が必要です。ただ用いれば良いというわけではありません。
自分に合った歯磨剤・洗口剤を選択することは非常に難しく、歯科医院にて自分に合ったもの選んでもらうことが安全と言えるでしょう。
まとめ
・歯周病患者‥歯磨きが最重要+虫歯リスクが低い場合は洗口剤を補助的に用いることも良い
・虫歯患者‥歯周病予防のため歯磨きは頑張る+虫歯予防のためフッ素を中心に考える
8.歯周病は予防できる?
歯周病の予防は可能です。歯周病が進行する前から適切な歯ブラシの方法を見につけ実践するのが得策と言えるでしょう。
基本は、3ヶ月に1回のメンテナンスを推奨されています。
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・定期的なメンテナンス間隔を維持している患者は、メンテナンスが少なかったり、全く受けていない患者に比べてアタッチメントロス(歯周病の進行)や歯の喪失が少ない
・3ヶ月に1回のメンテナンスを行った患者は、それ以上の間隔でメンテナンスを受けた患者と比較して、歯周病が進行するリスクを下げる
・患者の大多数において、約90日後には病原性を示す量にバイオフィルムが再形成される
当院のメンテナンスの間隔
基本‥3ヶ月
中等度または進行性の歯周炎またはインプラント周囲炎‥3か月
軽度の歯周炎またはインプラント粘膜炎‥4か月
歯周炎またはインプラント粘膜炎に対して感受性が低い‥6か月
9.歯周病は口臭の原因になる?
歯周病は口臭の原因の大部分を占めます。
・真性口臭症・生理的口臭(22%)‥口腔清掃不良のために蓄積した舌苔やプラークに由来
・真性口臭症・歯周病等由来(45%)‥歯周病、重度う蝕、唾液腺の機能低下などに由来
・真性口臭症・全身疾患由来(1%)‥肝臓疾患などに由来
・仮性口臭症(29%)‥自分に口臭があると思いこむ精神的なもの
・口臭恐怖症(3%)‥真性口臭症、仮性口臭症に対する治療では訴えの改善が期待できないもの
主に口腔清掃不良のため蓄積した舌苔やプラークに由来するもの、歯周病等に由来するものが大部分を占めますので、歯周病を改善すれば改善する口臭も多いといえます。
10.歯周病と全身の関係
歯周病が起こるということは、歯肉に炎症が存在することを意味します。
その際に炎症によって出る毒性物質が歯肉の血管から全身に入ると、様々な病気を引き起こす原因となります。
炎症性物質が関与するもの
・糖尿病‥血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせる
・早産
・低体重児出産
・肥満
・心筋梗塞‥歯周病患者は健常者と比べて、心筋梗塞を発症する確率が3倍高いとも言われている
・脳梗塞
・アルツハイマー病の悪化
歯周病の予防・治療を行うことで、全身の様々な病気のリスクを下げることが可能ですので、毎日の歯磨きがとても重要であるということがわかります。
11.当院の歯周病治療の流れ
歯周病治療でやることはとてもシンプルで ”細菌を除去し炎症をコントロールする”これに尽きます。
本来は、抜歯・根管治療など様々なことが絡んでくるのでもっと複雑になりますが、シンプルにまとめると以下のようになります。
1.ブラッシング法をマスターする‥日々のブラッシングはとても重要で、これなくして歯周病治療は成り立ちません。歯科医院でお口の中を綺麗にしたとしてもお食事をとればまたプラークが付着しますので、それらを毎日綺麗に除去しないといけません。ブラッシングの方法は人それぞれで、歯並び・歯茎の薄さ・器用さ・歯周病の進行度合いなどにもよってきますので、一概にベストな方法は無く、患者様個々に合った生涯続けれるシンプルで効果的にプラークを除去できる方法を練習していく必要があり、担当の歯科衛生士と共に練習し、身につけていただく必要があります。
2.歯科医院で歯肉縁下の歯石を丁寧に除去する‥歯肉の中に付着した歯石はとても強固で簡単に除去することはできません。また歯肉が歯石に覆いかぶさっているので直接見ることは出来ず、手指の繊細な感覚などに頼ることとなります。肉眼で歯石を見ることはなかなか難しいため、高倍率のルーペも必要となってきます。1本1本丁寧に除去していくと1本10分以上かかることもよくあります。
3.歯周病治療の評価‥それぞれの歯の歯周病の進行度を細かく検査します。ポケット深さ・出血の有無・動揺度の有無などをみるのですが、その歯が安定した状態までコントロール出来たかを評価します。このときの検査結果次第で、抜歯 or 保存が決まる歯もあります。また、骨欠損(歯周病による骨吸収)が大きく進行していて本来であれば抜歯のような歯も、条件が整っていれば歯周組織再生療法(歯周病により溶けた骨を治す治療)により骨欠損を改善し、歯を残せる可能性があるので、その適応かどうかもCTを撮影し判断していきます。
4.歯周組織再生療法‥溶けた骨を再生する治療のこと、骨を再生することでポケットを浅くし、炎症をコントロールする。
5.メンテナンス‥基本は3ヶ月に1回のペースで通うのがベストです。口腔内の状況・ブラッシングの状況などでペースが変わります。普段のブラッシングでは落としきれない部分のプラークを細かく除去したり、磨き残しがある部分がないか、歯周病が安定した状態でコントロール出来ているかなどをチェックします。
12.歯周病治療は痛い?
基本的にそこまで痛いことはありません。痛みを感じることがあるとすると歯石除去の時ですが痛みが出ておつらい際には、しっかりと麻酔させていただくので心配していたく必要はありません。
13.歯周病に効く薬は? ジスロマック?
抗生剤(ジスロマックなど)は、休眠している細菌以外への効果を期待することができますが、効果期間が過ぎればまた元通りの状態に戻ってしまうので、一時的な効果は期待できても、歯周病を完治させることはできません。
さらに、抗生剤を乱用することで耐性菌を作ってしまうリスクもありますので、歯周病治療のためにむやみに使うべきではありません。
14.歯周病が進行すると歯並びが悪くなる?
歯を支える組織が少なること(歯周病の進行)により起こること
・唇側へのフレア(歯が唇側へ傾斜し、出っ歯になる)
・歯の挺出(歯が骨から飛びだしてくる)
・歯の捻転(歯が回転する)
・歯と歯の間の隙間が空いてくる
歯根膜が外力に対して歯を安定させることができなくなった結果、このようなこと起こると考えられています。
歯周病が進行すると歯並びが悪くなるので、「歯周病の治療を行う際には、矯正治療を併用し、より良い噛み合わせを作ること」の重要性が示唆されております。
*この内容は、「歯周病と歯並びの関係」にて詳しく記載しております
15.歯周病が進行しており歯並びが悪いが、矯正治療は可能か?
以下のことが満たされれば、矯正治療を行っても良いと考えています。
歯周病患者に対し、矯正治療を行う際に守るべきルール
・軽い力で歯を動かすこと(強い力の作用は歯周病を悪化させる)
・歯周病の炎症がないこと
・治療中の口腔衛生状態が良好であること(圧下中に健全な歯肉組織を維持することが、辺縁骨破壊のリスクを低減する)
上記のことを満たすために必要な治療
1.十分な歯周基本治療(歯周病の初期の治療)を行う
2.骨欠損が残る場合は、歯周組織再生療法(歯周病によって溶けた骨を再生する治療)を行う
3.口腔内の炎症をコントロールしてから矯正治療を行うことが推奨されています。
*当院の矯正治療‥マウスピース矯正(インビザライン)はこちらで詳しく解説しております。
*当院の矯正治療‥インプラントと矯正治療の関係についてはこちらで詳しく解説しております。
16.歯周病治療に矯正治療を併用するメリット
主に以下のことがあります!
・出っ歯の改善=審美性が良くなる、口元が引っ込む
・噛み合わせの改善=機能的に長持ちする 審美的にも、機能的にもメリットがあると言えるでしょう。
ただ、歯周病が完璧にコントロールされないと、矯正治療を行うことは出来ないので注意が必要です。
17.歯周病の手遅れな症状とは?
まず歯周病で歯を失う流れについて復習していきましょう。
歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が少なくなり、歯がぐらぐらしてきます。また、その結果として歯が浮いたような感じ、歯の移動(歯並びの変化)、食べ物が詰まりやすくなる などの症状が起きてきます。
したがって、これらの症状がある場合には歯周病は重度に進行している可能性があります。
歯周病は放置すると進行する一方なので、早期に歯科医院に受診されることをお勧めします。
また、上記の「4.歯周病の症状は?(歯周病チェックリスト)」でも書かせていただきましたが、歯周病のチェック項目は以下になります。
⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩
歯周病チェックリスト
・口臭を指摘されたことがある、口臭が気になる
・朝起きたときに口の中がねばねばする
・歯磨きした際に血がでる、歯ブラシが赤くなる
・歯茎が赤く腫れている
・歯茎が下がり、歯が長くなった気がする
・歯茎を押すと血が出たり、膿が出る
・昔と比べて歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなってきた
・歯が浮いた感じがする
・昔と比べて歯並びが変わった気がする
・歯がぐらぐらする
下の4つの項目に当てはまる場合は、歯周病が重度に進行し、根の先端部まで骨が溶けている可能性があり、抜歯が必要な場合も多々ありまので、症状が当てはまると思われた方いましたら是非お早めにご相談ください。
歯の状態によっては、歯周組織再生療法を行うことで残せるチャンスがありますので、是非お早めにご相談ください。
*歯周組織再生療法に関しては、下記の「18.歯周病により溶けた骨を治す‥歯周組織再生療法」に詳しく書いてあるので、是非お読みください。
18.歯周病により溶けた骨を治す‥歯周組織再生療法
歯周組織再生療法の最大の目的は『歯を残すこと』です。
歯周病により失われた骨を再生することで歯の寿命を長くします。深いポケットのある歯に対し、長期でみたときの生存率を高めるため(長持ちさせるため)に行います。
深いポケット(骨欠損)の残存は、メンテナンスに通っている患者様の歯の喪失リスクを高めることにも繋がりますので、歯周組織再生療法によりポケットを浅くし、歯周病がコントロール出来た状態でメンテナンスを行うほうが安心といえるでしょう。
当院の歯周病のページでも詳しく記載してありますが、ここでも詳しく解説させていただきます。
今現在、日本でよく行われているものには、主に以下の4つの方法があります。
①骨移植
②組織再生誘導法(GTR:Guided Tissue Regeneration)‥物理的に上皮細胞の移動を阻止することで歯根膜細胞を誘導し新付着を得る術式のこと、1982年に最初に報告され、それ以降、700以上の臨床論文と300以上の基礎論文が世界中から報告されている。
③エムドゲイン療法(EMD:Enamel Matrix Derivative)‥EMDは歯根膜/骨芽細胞の遊走と増殖により無細胞セメント質を形成し、比較的治癒が早いことが特徴である。1990年代に開発され、現在では40カ国以上で使用、600以上の臨床論文と1000以上の基礎論文が世界中から報告されている。
④塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF:basic Fibroblast Growth Factor)
当院にて良く用いている方法は、②組織再生誘導法・③エムドゲイン療法になるのですが、骨欠損の状態・術式などによりこれらを併用して行うことが多いです。
歯周組織再生療法を成功に導くための因子
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①骨が再生しやすい環境を作る
②その環境で血餅を安定させる
③血餅が安定した状態を保護し、維持する
これら3つを達成するためは、創部の安定に配慮した術式選択・適切な術後管理が必要となってきます。
術式ですが、現在ではMIST(Minimally Invasive Surgical Technique)やM-MIST(Modified MIST)などのマイクロスコープを用いた低侵襲な術式が推奨されており、当院でもこれらの術式で行うことが多いです。
細かい話ですが、前歯部で歯間乳頭(歯と歯の間の歯茎)の審美性にも配慮すべき場合は、NIPSA(Nonincised Papilla Surgical Approach)やEntire Papilla preservation techniqueという歯間乳頭(歯と歯の間の歯茎)に切開を入れないといった最新の術式も採用することもあります。
*歯周組織再生療法により下顎前歯を温存した症例
*歯周組織再生療法により右上大臼歯を温存した症例
19.終わりに
長々と書いてきましたが、歯周病治療はとても専門性が高い治療と感じてます。歯周病に対し根本的な治療ができる医院作り、専門の歯科衛生士の育成、歯周組織再生療法を行える設備・技術力 など様々なものが必要となってきます。
歯周病チェックリストをみていただき、少しでも当てはまるなと思った方いましたら是非お気軽にご相談ください。初診にて来院していただければ、歯周病の検査など細かく行い、分析させていただきます。
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