入れ歯・ブリッジと何が違う?インプラントの基礎知識と選び方
1.なぜ今「インプラント」が注目されているのか

歯を失ったときの治療法はひとつではない
「入れ歯が合わなくて食事が楽しめない」「ブリッジのために健康な歯を削りたくない」──そんな悩みをきっかけに、インプラント治療を検討する方が増えています。
歯を失ったときの治療法はひとつではなく、主な選択肢は「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の3つです。利点と留意点を理解し、自分に合った方法を選びましょう。
入れ歯は取り外しができる反面、噛む力が弱まりやすく、装着時の違和感を覚える方もいます。ブリッジは固定式で安定感がありますが、健康な隣の歯を削る必要があります。一方、インプラントは人工歯根を顎の骨に埋め込むため、自分の歯に近い噛み心地を再現できる点が特徴です。
どの治療にもメリット・デメリットがあり、重要なのは「自分に合った方法」を選ぶことです。現在はCTなどの精密診断技術が進歩し、各治療の適応をより正確に見極められるようになりました。
- 入れ歯:取り外し式/違和感や噛む力の低下が出やすいことがある
- ブリッジ:固定式/隣在歯を削る必要がある
- インプラント:骨に固定/天然歯に近い噛み心地を目指せる
インプラントが選ばれるようになった背景
かつては「インプラント=特別な治療」という印象がありました。しかし、医療技術の進歩により、治療の安全性と成功率が向上し、多くの患者が安心して選べる選択肢になっています。特に、3D画像による骨量の診断やコンピューターガイド手術の普及により、より精密で低侵襲な治療が可能になりました。
また、健康な歯を削らずに済む点や、噛む力・見た目の自然さを両立できることも選ばれる理由です。インプラントは“長期的な口腔機能の維持”という観点からも、
「特別な人のための治療」ではなく、再びしっかり噛める生活を取り戻すための、身近な選択肢のひとつになっています。
“噛む力”や“見た目”を保つための選択肢として
インプラントが注目される最大の理由は、「噛む力」と「見た目の自然さ」を両立できる点にあります。人工歯根が骨にしっかり固定されることで、入れ歯では得にくい安定感と強い咀嚼力を再現できます。また、骨に直接刺激が伝わるため、歯を失った部分の骨吸収を防ぐ効果もあります。
さらに、セラミックなどの審美素材を使用することで、天然歯に近い自然な色調と透明感を実現できます。食事や会話の際に「「硬いものを気にせず食べられる」「人前で笑うときに気にならなくなった」──そんな変化が、生活の質(QOL)の向上につながります。
インプラントは、単に“歯を補う治療”ではなく、健康と自信を取り戻すための大切な手段として、多くの方に選ばれているのです。
2.入れ歯・ブリッジ・インプラント——3つの治療法を整理する

それぞれの基本構造と治療の流れ
入れ歯・ブリッジ・インプラントの「構造」と「進め方」を把握すると、自分に合う選択肢が見えやすくなります。
入れ歯(義歯)は、人工の歯と歯ぐきを一体化させた装置を口の中に入れ、吸着や金属のバネなどで固定します。取り外しができるため、清掃しやすいのが特徴です。
ブリッジは、失った歯の両隣を削って支えにし、橋のように人工の歯を固定する治療法です。固定式なので装着感が安定し、短期間で仕上がるのが利点です。
インプラントは、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。治療期間はやや長くなりますが、構造的にもっとも天然歯に近い仕上がりになります。
- 入れ歯:取り外し式/比較的短期間で作製しやすい
- ブリッジ:固定式/支台歯の形成後に数回の通院で完了
- インプラント:精密検査→埋入→治癒→装着と段階を踏む
メリット・デメリットを中立的に比較
入れ歯は比較的費用を抑えられ、広い範囲の歯を補える点が強みです。
一方で、装着時の違和感や噛む力の弱さを感じることがあり、食事の種類によっては制限が生じる場合もあります。
ブリッジは固定式で違和感が少なく、自然な見た目に仕上がりやすい治療です。
ただし、支えとなる健康な歯を削る必要があり、長期的にはその歯に負担がかかる可能性があります。
一方、インプラントは、隣の歯を傷つけずに済み、噛む力・見た目ともに天然歯に近い点が最大の魅力です。ただし、外科的処置が必要で治療期間が長めになること、費用が比較的高い点には注意が必要ですが、長期的な安定性を重視する方に選ばれています。
自分に合った選び方を知ることの大切さ
最適な治療は「最新・高価」だからではなく、骨や歯ぐきの状態、残存歯の健康度、清掃習慣、メンテナンス意欲などの組み合わせで決まります。
たとえば、取り外しやすさを重視する方は入れ歯が向き、短期間での修復を希望する場合はブリッジ、長期的な安定性を求める方にはインプラントが適しているケースもあります。
まずは専門の歯科医師に相談し、CT撮影などの精密検査を通して客観的に診断を受けることが大切です。正しい知識を持って選択することで、将来の歯の健康を守る第一歩となります。
3.インプラントは特別な治療ではなくなった理由

技術の進歩と安全性の向上
技術革新と標準化により、インプラント治療は安全性と予測性が高まっています。大枠の流れと管理基準が整い、以前より“特別視”せずに検討できる環境です。かつてインプラント治療は「難しい」「特別な治療」と捉えられていましたが、近年の発展で安全性が大きく向上しました。チタン製インプラント体は生体親和性に優れ、骨と結合するオッセオインテグレーションの原理が確立しています。
さらに、治療工程や器具の標準化が進み、各ステップで精密な管理が可能になりました。手術前のCT診断やシミュレーションにより、神経や血管を避けた安全な位置に埋入する計画が立てやすくなっています。これらの技術革新によって身体への負担が抑えられ、結果として予測性の高い治療が実現。現在では、歯を失った際の治療法の一つとして、日常診療で検討される選択肢になりつつあります。
精密機器(CT・マイクロスコープ等)の活用
三次元診断と拡大視野の導入により、計画と処置の精度が底上げされています。機器は“最新性”ではなく安全性・精密性の基盤として活用します。歯科用CTでは従来のレントゲンでは把握しづらかった骨の厚みや神経の位置を三次元で可視化できます。これにより、埋入位置・角度・深度を立体的に計画でき、術前のリスク評価が具体化します。
またマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)により、切開・剥離・縫合などの微細な操作を拡大視野で確認しながら進められます。結果として処置の精度向上が期待でき、術後の腫れや痛みの軽減にもつながります。
こうした精密機器の活用は、単なる設備紹介ではなく、治療全体の安全性・再現性・説明責任を支える重要な要素です。
日常的に行われる治療として広がる現状
インプラント治療に関する教育・ガイドライン・材料や器機の標準化が進み、インプラントは日常診療で検討される身近な治療法になっており、ニーズの高まりも背景にあります。かつては一部の専門医のみが担当する印象でしたが、現在は一般歯科医院でも行える環境が整ってきました。患者さんの「しっかり噛みたい」「自然な見た目を取り戻したい」という希望が普及を後押ししています。
もちろんすべての方に適するわけではありませんが、事前の診査・診断でリスクや条件を把握すれば、適切に進められるケースが増えています。インプラントは“特別”ではなく、失った歯を補う標準的選択肢の一つとして定着しつつあります。
4.インプラントが向いている人・向いていない人

顎の骨や全身状態など適応の考え方
適応の鍵は「骨の状態」と「全身の健康」で、状況に応じて追加処置や計画調整を行います。インプラントは人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する治療です。したがって、顎骨の「量」と「質」が重要になります。骨が十分であれば進めやすく、骨吸収がある場合は骨造成や再生療法を検討します。
同時に、全身状態の把握も不可欠です。たとえば血糖コントロールが不安定な糖尿病、喫煙、骨粗しょう症治療薬の服用などは、治癒や骨結合に影響する可能性があります。ただし、これらは一律に不可という意味ではなく、医師による評価のもとでリスクを考慮した計画立案が可能です。
ただし、これらは一律に「できない」ということではなく、医師の判断のもとでリスクを考慮しながら適切な治療計画を立てることが可能です。インプラント治療は“誰でもできるわけではない”が、“多くの人に可能性がある”治療といえます。
「年齢が高い=できない」ではないこと
年齢そのものは適応の決定因子ではありません。大切なのは骨量・持病の安定・お口の清掃状況です。近年は60代・70代でもインプラントを選択する方が増えています。骨の量や質が保たれ、持病が安定していれば、年齢が高くても治療の検討は可能です。入れ歯やブリッジで不便がある場合、噛む力や食事の満足度の改善が期待できるケースもあります。
一方で、骨量不足や全身状態・服薬の影響でリスクが高い場合には、無理をせず別の選択肢を検討します。「年齢だから」ではなく「状態に基づいて」最適な方法を選ぶことが重要です。
まずは診査・カウンセリングで確認する重要性
インプラントが適しているかどうかは、見た目だけでは判断できません。CT撮影による骨の立体的な分析、歯周組織の状態、全身疾患や服薬状況の確認など、総合的な診査が必要です。これらの情報をもとに、治療の安全性や成功率を高めるための計画を立てます。
CTで骨の三次元的な状態を確認し、歯周組織、全身疾患、服薬状況などを総合評価したうえで、安全性と予見性を高める計画を立てます。カウンセリングでは、インプラント・入れ歯・ブリッジの長所と留意点を中立的に比較し、患者さまが納得して選べるよう情報を整理します。
「自分に合うのか」「どんなリスクがあるのか」といった不安は自然なものです。まずは診査と相談で疑問を一つずつ解消し、自分の条件に合った現実的な選択肢を一緒に見極めましょう。
5.治療のステップを知る——相談から完成までの流れ

カウンセリング → 精密検査 → 計画立案 → 手術 → メンテナンス
インプラント治療は、思い立ってすぐに行うものではありません。段階を踏んで進めることで、安全性と納得感を高められます。全体像を把握しておくと、不安が和らぎ行動に移しやすくなります。
まず行うのはカウンセリングです。
ご希望や不安を共有し、口腔内の現状を確認します。次にCT撮影や口腔内スキャンなどの精密検査で、骨の厚みや神経・血管の位置を三次元的に把握します。
その検査結果にもとづき計画を立案します。
埋入位置・角度をシミュレーションし、機能性と安全性のバランスを検討します。
手術は局所麻酔下で行い、人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋入します。埋入後は数か月の治癒期間を経て、上部構造(人工歯)を装着します。以後は定期メンテナンスで噛み合わせや清掃状態を確認し、長期的な安定をめざします。
- 相談(希望・不安の共有)
- 精密検査(CT・スキャン)
- 計画立案(シミュレーション)
- 手術(局所麻酔下で埋入)
- 装着・メンテナンス(長期管理)
不安を減らすために行う説明とシミュレーション
初めてインプラント治療を受ける方の多くは、「痛み」「腫れ」「手術への恐怖」といった不安を抱えています。その不安を和らげるために重要なのが、事前の丁寧な説明と可視化されたシミュレーションです。
CT画像や口腔内スキャンデータをもとに、実際にどの位置にインプラントを埋入するか、どのような工程を経るのかを立体的な画像で提示します。
これにより患者様は、治療の全体像やリスク・メリットを具体的に理解することができます。また、痛みへの配慮としては、局所麻酔や静脈内鎮静法などを適宜組み合わせ、リラックスした状態で治療を受けていただけるようにしています。
「知らないから怖い」という状態をなくし、安心して治療に臨める環境づくりを重視しています。CT画像やスキャンデータを用いて、埋入予定位置や工程を立体的に説明します。局所麻酔や静脈内鎮静法などを適宜組み合わせ、できるだけリラックスした状態で臨めるようにします。
- 画像・模型による具体的な説明
- 工程・期間・注意点の共有
- 麻酔・鎮静の選択肢と配慮
治療前に準備しておきたいこと
安全で確実なインプラント治療を行うためには、事前準備が欠かせません。
まずはお口全体の健康状態を整えること。虫歯や歯周病がある場合は、インプラント手術の前に治療を完了させておく必要があります。
また、喫煙は骨の治癒に影響するため、禁煙・減煙が推奨されます。
糖尿病・高血圧など全身疾患がある場合は主治医と連携し、時期や内容を調整します。
生活面では、手術当日〜直後の食事や通院計画を事前に確認し、準備をしっかり行うことで、手術の成功率を高め、術後の回復をスムーズにします。“準備の質が治療結果を左右する”それがインプラント治療の大きな特徴です。
- 口腔内の治療・清掃の徹底
- 禁煙・減煙の検討
- 主治医との情報共有(全身疾患)
- 食事・通院など生活面の準備
6.痛みや腫れへの不安を減らす取り組み

麻酔や鎮静法など負担を軽減する方法
麻酔技術の進歩と鎮静法の選択肢により、治療中の不快感をできるだけ抑える体制を整えています。
一般的には局所麻酔で処置部位の感覚を遮断し、温度管理や注入速度の調整など細やかな工夫で痛みを感じにくくします。恐怖心が強い方や処置時間が長い場合には、点滴で鎮静薬を投与する「静脈内鎮静法」を併用することがあります。半分眠ったような落ち着いた状態で治療を受けられるのが特徴です。
鎮静は担当医の管理下で行い、既往歴や内服薬、全身状態を確認したうえで可否を判断します。こうした方法の組み合わせにより、インプラント治療をより穏やかな体験に近づけます。
低侵襲手術(必要最小限の切開)の実際
「低侵襲手術」とは、組織へのダメージをできるだけ抑えるために、必要最小限の切開と剥離で行うインプラント手術のことです。CTや3Dシミュレーションソフトによる精密な術前診断によって、埋入位置や角度を事前に正確に設計することが可能になりました。これにより、メスで大きく切開する必要がなく、わずかな範囲からインプラント体を挿入できます。
切開範囲が小さいほど、術後の出血や腫れ、痛みが少なく、回復も早くなります。加えて、縫合糸の本数を最小限にするマイクロサージェリー技術を用いることで、より自然な治癒が期待できます。
こうした低侵襲なアプローチは、患者様の体への負担を軽くするだけでなく、治療に対する心理的な抵抗感を減らし、安心してインプラント治療に臨める要素の一つとなっています。
回復を早めるためのアフターケア
術後は適切な冷却と安静、そして清潔の確保が回復を支えます。手術直後は患部を冷やして炎症を抑え、処方された痛み止めや抗菌薬は指示どおりに使用します。自己判断での中断は避けましょう。お口の清潔を保つため、指示された範囲でうがい薬や歯ブラシを使用し、刺激の少ない方法でケアします。
やわらかい食事や十分な睡眠、栄養バランスの取れた食事も大切です。経過観察ではインプラントの安定や歯肉の治り具合を確認し、必要に応じてメンテナンスを行います。これらを丁寧に続けることで、術後の不安を減らし、良好な経過につなげやすくなります。
7.費用と期間の考え方——“無理なく通える”を第一に

治療期間の目安と通院回数
期間の目安は数か月〜半年、通院は5〜7回前後が一般的です。お口の状態や骨の量・質により前後しますが、まず初診でカウンセリングと精密検査を行い、治療計画を立てます。手術自体は1〜2回で完了することが多く、骨とインプラントが結合する「治癒期間」を数か月設けます。
治癒期間中は仮歯を装着し、日常生活への支障を抑えます。診査・手術・経過観察を含めた通院は5〜7回前後が目安ですが、症例により短縮・延長することがあります。焦らず歯科医師と相談しながら計画的に進めることが、長期的な安定につながります。
費用の構造(検査・手術・上部構造)をわかりやすく
治療費は大きく「検査・診断」、「手術」、そして「上部構造(被せ物)」の3要素で構成されます。内訳を理解すると見積もりの確認がしやすくなります。初期段階ではCT撮影や模型分析など、正確な診断のための検査が行われます。手術費には、人工歯根(インプラント体)の埋入と使用する材料費が含まれます。
- 検査・診断費: CT撮影・模型分析など、正確な診断のための費用。
- 手術費: インプラント体の埋入や使用材料を含む外科処置の費用。
- 上部構造費: 見た目と噛み合わせを再現する被せ物(素材により価格差)。
上部構造とは、見た目や噛み合わせを再現するための被せ物で、セラミックやジルコニアなど素材によって価格が異なります。これらの費用は症例数や使用素材により幅があり、「どこまで治療を希望するか」によっても変動します。事前に見積もりを提示してもらい、納得した上で治療を進めることが大切です。
分割払いや段階的治療という選択肢も
「無理なく通える」ために、費用計画や準備の進め方を現実的に考えましょう。医院によっては分割払いや段階的治療の相談が可能な場合があります(取り扱いの有無は事前にご確認ください)。
安全で確実な治療のためには準備が重要です。虫歯や歯周病がある場合は、インプラント手術の前に治療を完了させます。喫煙は骨の治癒を妨げるため、禁煙や減煙が推奨されます。糖尿病・高血圧などの全身疾患がある方は主治医と連携し、治療時期や内容を調整します。
- 口腔の初期治療: 虫歯・歯周病のコントロール。
- 生活面の準備: 手術当日前後の食事・通院計画の確認。
- 全身管理: 主治医との連携(内科的疾患のある場合)。
- 費用計画: 見積もりの事前確認、分割・段階実施の可否相談。
これらの準備をしっかり行うことで、術後の回復をスムーズにし、治療の安定性を高めることが期待できます。
8.長く使うために大切なメンテナンス

インプラントの寿命を左右する日常ケア
インプラントは、天然歯と同じように毎日のケアが欠かせません。歯ぐきの健康を守ることが、インプラントの長持ちにつながります。特に重要なのが、プラーク(細菌のかたまり)を残さないブラッシングです。天然歯と異なり、インプラントの周囲には血管が少ないため、炎症が起きると進行が早く「インプラント周囲炎」に発展することがあります。
やわらかめの歯ブラシで歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨き、デンタルフロスや歯間ブラシを併用して汚れを落としましょう。
- 歯ブラシ:やわらかめで小刻みに動かす
- 補助清掃:フロス/歯間ブラシを毎日併用
- 夜ケア:就寝前はとくに丁寧に
また、夜の歯磨きは特に重要です。就寝中は唾液が減り、細菌が繁殖しやすくなるため、寝る前の丁寧な清掃が寿命を左右します。正しいブラッシング方法を歯科衛生士から学び、日常ケアを習慣化することが何よりの予防です。
定期検診で確認するポイント
インプラントを長く使うためには、3〜6か月ごとの定期検診で状態を見直し、早期の変化に気づく仕組みを作っておきましょう。
検診では、歯ぐきの腫れや出血、ポケットの深さなどを確認し、炎症の早期発見につなげます。レントゲンで骨の吸収やインプラント体の固定状態を確認することも大切です。さらに、人工歯(上部構造)や土台のゆるみ、噛み合わせの微調整も行います。小さなズレを放置すると力が偏り、周囲組織に負担がかかることがあります。
定期検診は「点検」だけではなく、清掃の見直しや生活リズムに合わせたケアの再提案まで含めたメンテナンスプロセスです。気になることは些細な段階で相談し、良い状態を保ちましょう。
トラブルを防ぐためにできること
インプラントのトラブルを防ぐためには、セルフケアとプロケアの両立が重要です。まず、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、マウスピースを使用することでインプラントへの過剰な力を防げます。また、喫煙は血流を悪化させ、歯ぐきの治癒を妨げるため、できる限り控えることが望ましいでしょう。
定期的なプロフェッショナルクリーニングでは、専用の器具を使って自宅では落としきれないプラークやバイオフィルムを除去します。これにより、インプラント周囲炎のリスクを大幅に低減できます。さらに、噛み合わせや生活習慣の変化も定期的に確認し、異常があれば早めに歯科医へ相談することが大切です。小さな違和感のうちに対処することで、長期的に快適な状態を維持できます。
- マウスピース:力の集中を緩和
- 禁煙・減煙:治癒と血流の面から有利
- プロケア:バイオフィルムを定期除去
噛み合わせや生活習慣は時間とともに変化します。違和感を放置せず、早めの受診で調整することが、長期的な快適さにつながります。
9.実際の治療例から見る“違い”と“満足度”

治療前後で何が変わるのか(一般的な傾向として)
インプラント後に実感しやすい変化は、噛める感覚と見た目の自然さです。まず全体像をつかみ、そのうえで個別の条件に照らして検討しましょう。入れ歯やブリッジでは、咀嚼力や発音の違和感を覚えることがありますが、インプラントは顎の骨に固定されるため、自分の歯に近い安定感が得られます。人工歯(上部構造)にセラミックなどの審美素材を用いると、光の透過性や色調が天然歯に近づけやすく、見た目の自然さに満足される方が多い傾向があります。
治療後は「硬いものが食べやすくなった」「会話中に気を遣わなくなった」といった声が一般的で、機能面と心理面の両面で生活の質(QOL)の向上が期待できます。
入れ歯やブリッジから切り替えた方の声(体験談風の構成)
入れ歯を長年使用していた方の多くは、「外れやすさ」や「噛みにくさ」に不満を感じて来院されます。インプラントへ切り替えた方からは、「しっかり噛めるようになり、食事が楽しめるようになった」「見た目が自然で、人と話す時に気にならなくなった」といった声が聞かれます。
ブリッジから移行した方は、「健康な歯を削らずに済んだ」「違和感が減った」と話すことが多く、自分の歯を守りながら快適に生活できる点に満足されています。もちろん、全ての方に当てはまるわけではありませんが、これらの傾向は多くの臨床現場で共通して見られます。
- 食事面:硬いものを含めて噛みやすいと感じる
- 見た目:自然な色調で人前でも安心しやすい
- 装着感:外れにくく、会話時の不安が軽減
- 歯の保存:隣在歯を削らずに済むケースがある
「変えてよかった」と感じる理由を解説
インプラントに変えて満足度が高い理由の一つは、長期的な安定性と機能性です。入れ歯のように定期的な作り直しが不要で、適切なケアを続ければ10年以上使用できる例もあります。また、インプラントは噛む刺激が顎の骨に伝わるため、骨の吸収を抑え、顔貌の変化を防ぐ効果も期待できます。さらに、隣の歯に負担をかけずに済む点も、ブリッジとの大きな違いです。
これらの要素が、「治療して良かった」「もっと早く知っていれば」という声につながっています。インプラントは見た目の美しさだけでなく、口腔全体の健康を長く守る治療として、多くの患者様に支持されています。
- 安定性:適切なメンテナンスで長期使用が見込める
- 骨への配慮:咬合刺激が骨に伝わりやすい構造
- 残存歯の保全:支台歯形成が不要
- 総合的QOL:機能と見た目の両面から日常を支える
10.まずは相談から——あなたに合う治療法を一緒に考えましょう

「無理に勧めない」姿勢を明示し安心感を強調
無理に勧めないことを前提に、まずは不安やご希望を伺い、安心して話せる場を整えます。
インプラント、入れ歯、ブリッジなど、歯を失った際の治療法には複数の選択肢があります。どの治療にも利点と注意点があり、「どれが正解」と一概に言えるものではありません。そのため、初回のご相談では治療を無理に勧めることはありません。まずは患者様のご希望や不安を丁寧に伺い、現在の状態を正確に把握することから始めます。
「しっかり噛めるようにしたい」「見た目を自然にしたい」など、目的が違えば適した治療も変わります。歯科医師としての専門的な視点から、それぞれの治療法のメリット・デメリットをわかりやすくご説明し、納得のうえで次のステップへ進めるようサポートいたします。患者様ご自身が安心して決められる環境を整えることが、私たちの基本姿勢です。
現在の状態を知るためのカウンセリングのご案内
はじめに現在の状態を確認し、画像診断を含む客観的な評価で適応を見極めます。
カウンセリングでは、まず口腔内の状態を確認し、失った歯の位置や本数、骨の量、歯ぐきの健康状態を総合的に診断します。インプラントが適しているかどうか、あるいは入れ歯やブリッジの方が望ましい場合も含め、複数の治療法を比較検討できるように説明します。
CTやレントゲンを用いた精密な検査を行うことで、骨の厚みや神経・血管の位置を把握し、安全性を考慮した治療計画をご提案します。こうした診断プロセスは、治療を始める前の不安を軽減し、「自分の口に本当に合うのはどの治療か」を理解するうえで非常に重要です。無理のないペースで話し合いながら、納得できる選択を一緒に探していきましょう。
自分にとって最適な方法を知ることから始めよう
費用や期間だけでなく、生活との相性や将来のケアも含めて総合的に判断します。
治療法の選択は、「費用」や「期間」だけで決めるものではありません。日常の食事内容やお手入れのしやすさ、将来的なメンテナンスのしやすさまで考慮する必要があります。たとえば、インプラントは天然歯に近い噛み心地が得られますが、骨の状態によっては難しいケースもあります。一方で、入れ歯やブリッジには手術を伴わないという利点があります。
私たちは、こうしたそれぞれの特徴をわかりやすくお伝えし、「自分にとって最適な選択肢」を一緒に考えるお手伝いをします。大切なのは、治療を「受けるかどうか」ではなく、「どんな未来を望むか」。まずは一度、現在の状態を知ることから始めてみませんか。
監修:大杉歯科医院
所在地〒:三重県津市河芸町東千里175-2
電話番号☎:059-245-5358
*監修者
大杉歯科医院 院長 大杉 和輝
*出身大学
愛知学院大学
*経歴
・2015年4月:医療法人社団石川歯科 勤務
・2021年12月:医療法人大杉歯科医院 院長就任
*所属
・5D-Japan
・OJ(Osseointegration study club of Japan)会員
・日本臨床歯周病学会会員
・日本口腔インプラント学会会員
・日本顕微鏡学会会員
・静岡県口腔インプラント研究会会員
・SPIS(Shizuoka Perio implant Study)会員
